みずほ銀行グローバル・マーケッツ・カンパニーのDX、鍵は「社内外連携とデータ活用」 Symphonyで実現

『未来化プロジェクト』と銘打ち、グローバル・マーケッツ・カンパニーのDX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組むみずほ銀行市場開発部。DX化を担う重要基盤の1つに「Symphony」を位置づけ、社内外のステークホルダーとの連携を拡充し、業務効率化を推し進めています。同部に所属する市場システム開発推進チームのお2人に、Symphony導入の背景、活用方法、その効果についてお話を伺います。

みずほ銀行
市場開発部
市場システム開発推進チーム
次長 貞利修平様・調査役 島田貴章様

DXプロジェクトの2つの核は「データレイク」と「Symphony」

まずは、お2人の業務内容を教えてください。

貞利修平様(以下、貞利様):

私たち市場開発部は、みずほフィナンシャルグループの中でグローバル・マーケッツ・カンパニー(以下、GMC)とよばれる、銀行の市場業務、取引の執行を担当する部門に属しています。

部門全体としては、お客さまとダイレクトに接することもあれば、営業部店の担当を介してお客さまと接することもあります。また、他の金融機関や証券会社とも取引をしています。これを国内だけでなく、海外でも同じように行っています。

その中で、システムを担当し、取引の自動化・電子化を進めるのが我々の仕事です。ここ数年は特に『未来化プロジェクト』として、ディーリングルームのDXに注力しています。

 

島田貴章様(以下、島田様):

そのDXを進めるにあたり、GMCの現場のニーズをくみ取り、取り入れていくのも我々の仕事です。現行のシステムの更新をしたり、そのユーザーである現場とIT部門の間に入ってプロジェクトの推進、サポートを行ったりもします。

そして、Symphonyのように、利用しているツールを運営する御会社様とのコミュニケーションも担当しています。

 

『未来化プロジェクト』の全容と、Symphonyの活用状況を教えていただけますか?

貞利様:

『未来化プロジェクト』は、GMC全体で取り組んでいる、ディーリングルームのDXプロジェクトです。発足の背景にはやはり、「ディーリングルームを電子化・自動化していかなければ世の中においていかれる」という課題意識がありました。

プロジェクト開始当初、RPAなどを利用して効率化を進めていました。その後、さまざまなテクノロジーを調査し、見極める段階を経て、現在はデータ基盤としての「データレイク」とコミュニケーション基盤としての「Symphony」の2つを核に据えています。

Symphonyの最大の利点は、コミュニケーションだけでなく、チャットボットを開発することで行内のさまざまなシステムと連携し、自動化を推進していける点だと考えています。

今では国内のフロント、ミドル、バックに留まらず海外拠点でも利用されており、みずほ証券も合わせたグローバル・マーケッツ・カンパニー全体で活用している重要基盤となっています。海外拠点でも独自にボットを開発し、情報交換できるようになっています。

『未来化プロジェクト』におけるSymphonyの活用方法

データレイクに力を入れている理由や目的はどんなものだったのでしょうか?

貞利様:

データレイクとは、クラウド上で構築した基盤にビッグデータを一元的に保存しておける情報の格納庫のことです。ビッグデータの活用にあたり、市場部門で使われる行内データだけでなく、マーケットデータなどの構造化データ、ニュースなどの非構造化データなど、さまざまなデータを収集し、AIで分析する手段として導入しました。

基盤が完成してまだ間もないですが、BIツールで取引を可視化したり、ダッシュボードで取引や自分たちが持つ金利や為替のポジションの状況を可視化したり、さらに、Symphonyの基盤と一体化させて活用することで、そうした情報をグローバルに共有したりといった形で活用が始まっています。

 

一方、Symphonyを『未来化プロジェクト』の核として導入した背景にはどんな経緯があったのでしょうか?
島田様:

他のツールと比較して、コストが格段に低かったこと、ログを取れることに加え、Symphonyのセキュリティ、安全性の高さが挙げられます。我々は金融機関ですので、ツールを提供するSymphony社ですら中身が見えないというセキュリティの堅さは非常に重要でした。

一般的なコミュニケーションツールは一通り検討したのですが、総合的に判断してSymphonyに決めました。

 

現在、Symphonyをどのように活用していますか?

貞利様:

あらゆる場面で活用しています。各ルームで会話して、マーケットの状況を共有したり。従来は紙やハンコを使って回覧していたような情報も、オンライン上で共有・承認・記録できるチャットボットをSymphony内で開発し、一部で活用したりしています。

ほかにも、スケジュール管理をしてくれるチャットボット、ファイルサーバーに格納されている特定のファイルの内容が更新されたら教えてくれるチャットボットなどもありますね。

 

島田様:

また、データレイクに関連し、既存システムに入力されないものの有用な情報をデータとして蓄積するためにSymphonyチャットボットを活用しています。データ蓄積において、システム改修を行うほどではないものの個人管理の表計算ソフトよりは厳格に管理を行いたい、といったニーズにSymphonyチャットボットは上手くマッチしてくれます。

さらに、市場部門の業務はグローバルなのですが、海外拠点との連携がより効率的に行えるように翻訳チャットボットなども開発して利用しています。Symphony自体、英語・日本語に対応しているので、だれにでも使ってもらいやすいという利便性もありますね。

「社外との連携」も安心して、よりスムーズに

社外とのコミュニケーションに関しても、チャットボットを活用していると伺いました。

貞利様:

最近、Symphony上でのインターバンクの相手先とのやりとり、コンファメーションから取引システムへの入力データを自動生成するチャットボットを導入しました。情報が自動的に手元に記録されるし、その後の取引入力が自動化されて効率がいいですね。

 

島田様:

今後は相手先とも連携し、双方の業務とも自動化できるチャットボットも考えていきたいと思っています。

 

金融業界において、社外との連携はセンシティブな問題と耳にします。御行は外部との連携にもSymphonyの活用を進めていますが、今までご苦労はありましたか?

貞利様:

やはりコンプライアンスの問題が絡むので、簡単ではありませんでした。海外の金融機関での不芳事例などが伝わっていることもあり、行内に不安がなかったとは言えません。

ですから、まずは安全性を確保するために、モニタリングルールとネットワークの範囲をしっかりと決めて始めました。

今はもう少し自由度を高めていきたいと思っていて、その際に安全性が低下しないよう、AI監査ツールを導入し、モニタリングのレベルを高める予定です。

 

そのように社内外との連携を進めた結果、どんなインパクトがありましたか?

貞利様:

ハンコレスであったり、時間の短縮であったり、効率化には確実に大きく寄与しています。チャットボット開発初期のころには、各チャットボットの開発によって短縮された時間を計測していましたが、数をこなしていく中で、今は効率化されることが当たり前になってしまったため、もはや計測をしていないほどです。

 

島田様:

たしかに「仕事が進んでいる感」がありますね。不要な待ち時間がなくなり、社内の能率がすごく上がっています。経営陣からも「スマホからSymphonyにアクセスしたい」という要望が挙がっており、活用はさらに広がっています。

「DXの旗振り役」に必要なマインドセットと今後の展望

部内にチャットボットの開発担当者がいると伺いました。DXを内製化で進めているケースは業界ではめずらしい気もしますが、御行ではなぜ実現できているのでしょう?

貞利様:

行員の他に、同グループのみずほリサーチ&テクノロジーズから20人くらい常駐してもらって、彼らがスクラムを組んで内製開発を進めているのですが、その体制を活用できたのが大きかったです。

また、『未来化プロジェクト』にはもともと、「既存のシステムに手を加えるのは余計にお金がかかる」「システムはユーザーの近くで開発しないと世の中の速さについていけない」という前提があることも影響していると思いますね。

 

今後、主に社外連携について、どんな展望を描いていますか?

貞利様:

今後は、お客さまとのやりとりもSymphonyのチャットで行うなど、活用の幅をさらに広げていきたいと思っています。例えば、レートの問い合わせに返信してくれるチャットボットを、お客さまにも使っていただけるようにしたり、お客さまの利便性を高める部分で活用を進めていければと。

データレイクとSymphonyの一体化による活用も、ますます進めていきます。例えば、取引に関するチャットの問い合わせに、データレイクのデータを照会してそれに返信するような。市場取引に限ってですが、トランザクションやポジションのデータなども、国内外含め、可能な限りボーダレスにデータレイクに集約していく予定です。

 

最後に、DXの旗振り役として牽引されてきたお立場で、他の企業がDXを進める・企画するうえでリーダーとして大切なこと、アドバイスはありますか?

貞利様:

我々も相当苦労して、失敗したり後戻りしたりしながらここまできました。

なにか言えることがあるとすれば、「DXだ」と大上段に振りかぶってもアイデアは出てこないので、現場にいる、こうした新しいテクノロジーが好きな人と組んで、とりあえずやってみることでしょうか。

すると、まわりがうらやましがって、「そんなことできるの?そんなに便利になるの?」と乗ってくる。そういう進め方に行き着きましたし、これからもそんなイメージでいます。

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